ラジ観察日記
 
かたじけないのかたじけってなんだろう。そんなファーデルさんもびっくりの観察記。いい天気。リンクフリーです☆
 

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moratorium

ファンファンファン…

どこかで今日もサイレンが鳴っている。救われたい、救いたい。そういう人の思いが心臓を直に鷲掴む。近く、遠い。確かにそれは、静寂と乾燥を強調するものだった。

昨日の模試の結果が、背中の教科書以上にずん、とのしかかってくる。なんとなく塾へ行くのが面倒になって、その足でコンビニへと向かった。
環境保護無視のビニール袋に、鼻ピアスの店員が当然の様にショートケーキを入れる。一切れだけ容器に収められた、苺の乗ったショートケーキ。そして、いつもの癖で支払い中も思いついた単語を復習する自分。  tame、飼いならされた。
ファンファンファン…

「いい大学に入らなきゃね」
母の口癖の詰まったおにぎりには手を付ける気になれず、デイパックをしょい直す。風がひゅうと首筋をかすめて、俺は思わず身を竦めた。  ideal、理想的な。
ファンファンファン…

半年前に見つけた「秘密基地」には、数羽の先客がいたが、俺を認めるとすぐに飛んでいった。曇天の空へ羽根で、そう自らの力で。
捻じ曲がった金網の隙間から体を押し込むと、ジャケットが引っかかって、まだ塾に間に合うぜ、と口を挟む。ゆっくり外していると、上を、レールを摩耗させながら電車が駆け抜けていった。  compromise、妥協。
次の駅の次の駅の次の次の次の…そうやって線路を辿っていったなら、目的地ではない場所に着くだろうか。それとも、後続の電車に轢かれるのが早いのか。
今頃は、一人でも周りを蹴落としたい奴らが、ノートを必死に書き潰しているんだろう。俺だけがぽつん、と反対側のホームに立っている。  orbit、軌道。
ファンファンファン…


ファンファンファン…
今日も心のどこかでサイレンが鳴っている。ふたを取ると、クリーム特有の匂いが。   moratorium、なんだっけ。
俺はこれからシシュンキを超えて、現役か一浪か、大学生になって青年期を迎えて、そして二十歳になって、成人してオトナになって、年を取っていく。  
でも。二十歳になることが「人に成る」事なんだろうか。大人になったらこんな気持ち、忘れてしまうんだろうか。サイレンの事など、思い出さなくなるんだろうか。
不安不安不安不安不安…


ろうそく代わりにつけたフロンティアの煙は、ちょっと迷ってから上へと昇っていった。
二本目の電車が通り過ぎる。 俺は苺にフォークを刺しながら呟く。
「Happy birthday, 俺」



7月8日(水)23:37 | コメント(0) | 書き散らし | 管理

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