ラジ観察日記
 
かたじけないのかたじけってなんだろう。そんなファーデルさんもびっくりの観察記。いい天気。リンクフリーです☆
 

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北海道

ラジコ
部屋はきちんと片付いて、座っているのは私だけだ。姉は元からきれい好きだったけれど、今日の部屋は思い出一つ残さない位何もない。

姉が、突然
「北海道って、どう思う?」
と聞いてきてから、1年5ヶ月と18日。タカシさんは、私の自慢の姉の心を見事にさらってしまった。新居は出身と同じ、北海道なのだそうだ。
「姉は、寒いのが苦手なんです。そんな遠いところに…」
「大丈夫!夏はいい天気だし、冬でも玄関は二重構造だから!!」
そういうと、タカシさんはからっと晴れた日の大地を思わせる豪快な声で、がははと笑った。
タカシさん分かってない。全然分かってない。
私はなぜあの時腹が立ったんだろう?

床には、幼い頃貼りつけたシールの跡がかすかに黒ずんでいる。がりがりと、思い切り引っかきたくなった。それじゃ足りない気がして、どんどんと踏み鳴らしてやりたかった。

「お土産、送るね。何がいい?」
エステのおかげで更に美しくなった姉が、そっと聞いてくれたけど、憮然として、
「…チョコ納豆。」
可愛くない顔でしか答えられなかった。タカシさんは能天気にも熊のように声を上げた。

不意に甘い香りを感じて目だけ動かすと、髪をほどいた姉だった。そして私の隣にすとんと座り、肩をそっと寄せる。
そんな優しくしなくたっていいよ。明日にはもう行っちゃうじゃない。タカシさんのお嫁さんになるじゃない。無理矢理にひざを痛いほど抱えても、嫌な気持ちがあふれてくるのを抑えられなかった。
「全部持っていっちゃうんだ。荷物運べるの」
自分でも驚く位その口調がとげとげしくて、思わずはっとしたけれど謝れなかった。ところが、姉はさっきよりも柔らかい笑顔になった。
「忘れたくないから、持っていくの。大事な妹は連れて行けないしね」
目を思い切り瞑って、息を止める。言葉は出なかった。
「このシールの跡、懐かしいね。これも運べないな」
噛みしめた奥歯も肩も震えて、細い姉の体をどこまでも強く抱きしめた。ごめん。ごめんね。小さいときによくしてもらった、背中を撫でる仕草を、姉はただ繰り返した。白い恋人でいいんだよね。そう頭の上で微笑みながら。
分厚い流氷は腕を、耳を、心臓を流れて、やっと涙腺まで辿り着いた。

後日私宛に送られてきたのは、20箱以上の白い恋人と30箱以上のまりも羊羹。
タカシさんだ。絶対にタカシさんだ。


こんなに一人じゃ食べられないよ。
厚い流氷がまた動き始めるのを感じた。



7月8日(水)23:42 | コメント(0) | 書き散らし | 管理

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