ラジ観察日記
 
かたじけないのかたじけってなんだろう。そんなファーデルさんもびっくりの観察記。いい天気。リンクフリーです☆
 

簡単ファイル共有の時計付きファイルマネージャ―


滞留

青年は肩を落とし歩いていた。強い日差しが背中に蓄積する。あと2社かぁ。ぽつと呟いて、さらに肩を落とす。見慣れない帰り道を着慣れない上着片手に行く青年は、どこか頼りなげ。体育会系だった頃が嘘のようだった。

缶コーヒーでも、と辺りを見渡し、傍の公園に自動販売機を見つけた。新品の革靴が右へ向く。随分古びた印象の公園だが、緑は若々しい。ここのところ書類と下ばかり見ていた目に新しくて、赤茶のベンチに腰を下ろそうとし、
てやめた。左に傾いた看板にかろうじて読める文字で ―貸しボート― とあった。青年はじわりと嬉しくなり管理人の男性の手に硬貨を2枚落とした。少し考えて、缶コーヒーも握らせた。

たぷん、ぎっ、とぷん。穴場かな。大きな池に浮かぶのは舞っていた葉と待っている青年だけ。ちゃぽん。たった10cmの隔たりを越えて水と一つになっていく。いい天気だなぁ。たぷん、ぱしゃん。
ネクタイはもういいか。
気持ちいいなあ。
ふ、わあぁ。
ちゃぷ。



どれくらい経っただろう、青年の耳が呼んだ。鳥のさえずり、葉ずれ、耳元の水音。さむ。まだ少し肌寒くて、弓をはじくような震えに、気だるく左目から開ける。
眩しい光が目を射し、思わず右手をかざした。その指の間から暖かい光がもれて、ふつふつと溜まっていく気がする。広い空の下の高い木々の下の古い公園の中の丸い池の上に葉が一つ。うんとうんと伸びをして弧を描く鳶を追う。

頑張ろう。まだ2社あるじゃないか!青年は勢いよく立ち上がった。










数秒後、激しい水音と共に鳥が一斉に飛び立った。



7月8日(水)23:51 | コメント(0) | 書き散らし | 管理

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