| おじさん |
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| おじさんは、「おじさん」であり、「おじ」さんでもあるので、誰からも陽だまりの響きを込めて、おじさんと呼ばれています。
一軒ずつかかとの擦り切れそうな靴で回り、消印の付いた表をするりと落としてやります。多少の間違いがあっても、翌日きちんと届きます。顔を拭き拭き家に戻った村人達は、少しのかすれも無い消印を見て、熱いお茶を用意したくなるのでした。
2,3 日に一片、ぱららと届く束の紐を外しながら、おじさんは時々眩しそうな顔をします。名前の最後に様、と書き終えるときのかすかな緊張と、投函するときの淡い喜びとに気を遣いながら。かちゃ、どすん、ぱさり。また、きれぎれくらいにしか聞こえない歌を、口ずさむこともあります。そのくせ、奥さんが料理を運んできてくれる音がすると、どすんどすん。大きな音を立ててはんこを朱肉と手紙の間で往復させるふりをするのです。
今日の分を、かちゃ、どすん、ぱさり。この青いのは、角の三角屋根の家へ。かちゃ、どすん、ぱさり。花柄は坂の上のおばあさんに。働き始めた頃より目と手元を離しながら、宛名を大事にゆっくりと確認していきます。絵はがきの後、ふとおじさんは手を止めました。随分と恥ずかしそうに畳まれたむきだしの白い便せんに、おじさんの名だけがありました。腕をぎゅっと伸ばして短い言葉を辿る表情は、今までで1番眩しそうでした。
おじさんより少し遅れて帰った奥さんは、瞬きをしないようにしました。新品の、分厚くて丈夫そうななべつかみ。たった1つ、内側に押された消印に乱れはありません。きっと今夜の夕食はシチューです。 手紙は、切手が無くとも届きます。
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7月8日(水)23:58 | コメント(0) | 書き散らし | 管理
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