| 夏衣 |
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| ずいぶんと遠い記憶だ。
「これでもう痛くないぞ。」 膝に手を当てて、大真面目におまじないを唱えてくれた。林檎をもぐような仕草で耳に触れてくれた。頭をこそばゆいくらい撫でてくれた。あまりにも背が高かった。逆光で覚えていられないほどに私を見てくれた。それならば、笑っていたと、私はどうやって。 ねえ、包丁で切ってしまったの。スーツを片づけながらそっと背中に聞いてみる。単なる思い付きで、特に他意もなく、あくまでも冷静に、聞いてみたかっただけなのだ。
「絆創膏があっただろう。」
ふと、
ないのか?
手が止まっていたのだろう。やや疑問を含ませた声がした。 いいえ。いいえ、戸棚の左に。まつ毛が邪魔になってしまうくらい大きく振り返る。ぷんと土の匂いが通り過ぎた。ノートの右隅に書いていたパラパラ漫画のように、ぎこちなく思い出す。確かにあの時、まっ白いポロシャツははためいていたと。
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7月9日(木)00:19 | コメント(0) | 書き散らし | 管理
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