テールランプ |
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| うだる暑さに耐え切れず、じれったい汗が髪の生え際に滲んでくる。そんな夜。 「ありがとうございましたぁ」 気だるい声に押し出されて楽園を出る。缶ビールに肴にアイス。少しの重みを左手に感じながら、私は最近の食生活をぼんやりと思っていた。
運悪くもいつも待たされる信号にぶつかってしまった。 競るように走る車を見て、今感じている風も人工的なものかと考えてみたりする。2tトラックの影に阻まれて、世界は一瞬だけ鈍色でいっぱいになった。 赤信号は私の存在に気づいていないフリをして、いつまでも変わってくれない。中途半端な時間は、とても潰しにくいというのに。
袋を右手で持ちかえる。テールランプの残像を夜に残していきながら、どの車もスピードを緩めはしない。その、黒に不似合いな赤だけがとても綺麗だった。 ああ、手を伸ばせば触れられそう。光が闇に濁って、ゆっくりと目を覆っていく。上京してきた時も、確か似たような風景を見た気がする。何を考えてたっけ? 力を抜けば吸い込まれていきそう。もっと、もっと。
不意に信号は緑に変わり、汗が顎へと伝い、私の耳に音が戻ってくる。家に着く頃にはもうアイスは溶けてしまっているだろう。一度だけ信号を睨みつけて、明日は自炊しようと決めた。
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7月8日(水)23:26 | トラックバック(0) | コメント(0) | 書き散らし | 管理
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